江のブログ

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【大企業の実態】『組織のため』のフリをして『自分を守る』人たち~組織を守る人の心理とその影響~

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 今回は,大企業に特徴的な『組織を守る人』について考えてみました。

 日本社会では,自分のためではなく『組織のために頑張る』ことは自己犠牲的な美徳とされていますが,実際は(特に大企業では)「自分が所属している組織を守るための自己中心的な行為となっている,そしてこれが日本全体の競争力を下げているのでは」と思い,記事にしてみました。

 

大企業でのマル秘の人事評価マニュアルを偶然発見

 自分が入社してまだ5年目くらいの頃,部の中枢にいた人の異動後の荷物整理をしているときに,偶然,マル秘の人事評価マニュアルを見つけたことがありました。

 細かい内容は覚えてないですが,チラ見したところ趣旨はだいたい次のようでした。

自分の利益のために行動する者は,評価・昇格させてはならない。まわりの同僚・部下など組織のことを考えられる者こそ評価・昇格させるべし

 かなり強めの表現で書かれていたので,印象的でした。

 ただそのときの自分はまだ担当レベルだったこともあり,「やっぱり自己中な人は評価されないんだな」くらいにしか受け止めませんでした。

 しかし,同じ大企業に15年勤め,自分も課長職になり,会社全体のことも考えるようになった今,先の文言に違和感を感じています。

大企業では「組織のために行動する人」が評価される

 先ほどの例にもあったように,日本の大企業では,『利己的で自己中な人』より『組織のために頑張る人』が評価されます。

 それには次のような思考過程があると思われます。

  

  組織のために頑張れる人材

⇒ 利他的な行動がとれる

⇒ 人望すなわちリーダーの資格あり ⇒ 高評価

 

  この考え方に違和感を感じる人はあまりいないのではないでしょうか。

 どんな企業でも,利己的な人より,利他的な人がリーダーとして望ましいと判断されます。

 

 しかし,ここで問題提起したいのは,大企業において「組織のために頑張る」=「利他的な行動」といえるのか?あるいは,本当に会社の利益のための行動になるのか?ということです。

「組織のための行動」で得をするのは誰か?

 大企業では会社組織が複雑で,『自分自身が所属している組織の利益』と『会社全体の利益』が異なることが多々あります。

 そのような集団において,『組織のための行動』によって得をする人は誰でしょうか?

 

  「組織のために頑張る」という言葉ですが一見利他的に意味に捉えられがちですが,具体的には『”自分が所属する組織”のために頑張る』ということです。

 より具体的には,『自分と自分の利害関係者のための行動』と言うことができます。

 自分の利害関係者というのは,『自分』を評価する上司や,『自分』の評価項目である指導力を試される部下たちです。

 つまり,「組織のために頑張る」ということは「自分のために頑張る」ということに他なりません。

 

 「いやいや,組織や同僚たちのことを真に思って・・・」と思われる場合もあるかもしれません。

 その感情は否定しないですし真実と思いますが,もしその人が別の組織に異動すれば,今度は次に所属する新しい組織のために頑張り始めます。そこには,昔の同僚はいません。

異動の前後に共通するものは何かというと,『自分』です。

 

 つまり,組織のために頑張るということは一見利他的に見えますが,自身が社内のどこにいても共通項として存在する「自分自身」のために頑張るということあり,利己的な行動と考えられます。

ポイント

「組織のために頑張る」という行動は一見利他的に見えるが,実は利己的な行動

 

『組織のための行動』が自己中とは対極な『利他行動』に見える理由

 それではなぜ,組織のための頑張りが,利他行動に見えてしまうのでしょうか?

 それでは,人間は得てして、0(ゼロ)1(イチ)で判断してしまいがちで,利己的か利他的かの2元論で考えてしまうからだと思います。

 

 例えば,会社のことを考えず,自分のためにしか頑張れないことが『自己中』(0)だとします。

 すると一見,自己中の対極にあるのが,『組織のために頑張る』(1)ことであるように思えます。

そして,多くの人はここで思考停止してしまいがちです。

実際には『組織のために頑張る』=『自分のため』であるにも関わらずです。

 そして実際に『自分が所属する組織のために行動』する人達は,隠れた真実に蓋をして,自分の行動を利他的であると錯覚して正当化してしまうのです。

 

 しかし,見方を変えれば,たとえ『自分のため』であっても,最終的に会社の利益になっていれば何の問題もないと言えます。

 組織のために頑張った結果,会社の利益が増えて,その結果社員全員の給料が上がれば,これは疑いようもなく「利他的な行動」です。

 ですが残念なことに,大企業では得てして『組織のために頑張る』ことが会社のためにならない,あるいは会社に利益に反することすらあってしまうのです。

不調な大企業ほど『組織のために頑張り』が『会社の利益』にならない現実

 小さな会社では確かに「組織の利益=会社の利益」のはずです。  

 しかし大企業では,社内の組織の数は膨大です。その結果,マネジメントが悪いと,『ある1つの組織の利益』と『会社全体の利益』が相反するということが起きてしまいます。 

 

 その乖離を大きくしている背景が,日本の国際競争力低下と,大企業の業績不振です。

 業績の悪い大企業では,社内のいろいろな組織の存在意義が常に問われています。

その結果,組織の生き残りをかけた,非常にバカげた組織延命のためのアピールや,組織間の争いがあるのです。

 特に,エリートが集まる本社管轄の組織,研究所や技術管理部門ではその傾向が顕著です。

↓ 詳しくはこちらの記事に記載しました。

giron.hateblo.jp

 

  そのような社内のアピール合戦が会社のためになるでしょうか?

 例えば技術開発や社内の業務プロセスの改善について,社内コンペのような形で組織間で競争が生まれれば,それらは会社のためになるでしょう。

 

 しかし日本の大企業では,この後述べる理由によって,会社の利益とは離れたことに,貴重な会社のリソースが消費される結果となっているのです。

ポイント

大企業は「組織のための頑張り」が悪用され,会社全体に様々な不利益をもたらしている

 

『組織のための行動』により,時代遅れの不要な組織が淘汰されない

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 「自分が所属する組織のための行動」により,どんなネガティブなことが起こっているのか,具体的に見ていきたいと思います。

本来不要な組織が大量に長期間存続し続ける

 大企業には,本来不要な組織が淘汰されず,大量に生き残っています。

 自分が所属する大企業の研究所では,事業が無くなってそもそも要らない,あるいはかなり人減らしすべき組織がたくさんあります。

 しかし,無くなったり,規模縮小はしません。そうさせているのが『組織のための頑張り』です。

 

 例えば,社内での存在価値が低く,存在意義を疑われている組織があるとします。

 そこの組織長からすると,自分の代で組織が縮小したり消滅したりすると,上層部から自分のマネジメントの失敗と見做されて評価が下がることを恐怖します。

 その結果,組織存続のためにあらゆる手を尽くします。

 そして,『組織の存続のために頑張る』部下を評価します。

 すると組織の中でも,『組織のために頑張れる』人が生存しやすくなり,そういったタイプの人間が組織幹部に登用されます。

 そして最終的には,組織全体で『組織の存続のため』に努力することになるのです。

 こうして,本来社内での存在価値が低く,縮小あるいは消滅すべき組織であるにも関わず,存在してしまうことになります。

 その結果,このような不要組織の維持コストは会社の業績を押し下げることになります。

 

 それでは次に,組織の存続のために具体的にどのような手口が使われているのか,自分の会社も例に述べていきたいと思います。

不要組織存続のために行われている手口①:組織間の談合

 大企業では,組織間でやっていること(仕事内容)が被っていることが良くあります。

 同じことをバラバラの組織でやっている無駄ですし,組織を統合すると人員削減が心配です。なので上層部に無駄だと思われないように,組織間で談合して,役割分担を考えます。

 組織間の『横串』を挿すとか,『CFT(Cross Functional Team)』とかいろんな名前を付けて,談合して敵同士でありながら手を結ぶようなこともします。

 

 そして会社上層部が,談合を談合と判断できるだけのマネジメント力がない,あるいは自分が悪者になりたくない,という理由で,いとも簡単に騙されてしまいます。

 果たして,同じようなことをやっている大所帯の組織が存続することになってしまうのです。

 

 これらの結果,不要組織の維持費が無駄なだけでなく,組織マネジメントと称して「組織間の談合」という,本業とは異なる何ら会社の利益にならないことに貴重リソースが使われることとなります。

不要組織存続のために行われている手口②:組織の存続アピールのために貴重なリソース・時間・金を浪費

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 組織存続のための無駄の具体例をさらにみて行きたいと思います。 

 自分の会社を例に取ると,研究所では地味だが会社に利益を生む技術の開発より,耳ざわりの良い最新技術(例えば,猫も杓子もAI)などをつかった技術の研究・開発が優先されます。

 

 別にそれで成果が上がり会社の利益に繋がれば問題はないのです。

しかし,研究開発の出口であるビジネスモデルとして最初からそもそも成り立っていなかったり,やってる本人が成り立たせるつもりもない,という場合が多いのです。

 これらは当然,貴重の人材や会社の研究費の浪費となります。

 

 また酷い場合では,組織の存続のため,課題のないところに課題を無理やりつくります。あるいはそのための努力をします。

 事業ポートフォリオにない製品・サービスでも,それを再び事業化する計画があることにして研究・開発を継続します。

 また,事業として成熟した分野でも,無理やり改善の余地を見つけて,自分たちの仕事をつくり,その存在価値を示そうとするのです。

 そもそも事業になってない,本当はなる予定もない分野の研究・開発,ありもしない課題への取り組みは,無駄以外の何物でもないです。

 

 このようなバカげた状況が何故大企業の中でまかり通っているのか?については別の記事に書きたいと思います。

「組織のための行動」は日本の競争力低下にも影響

ここまで 「自分が所属する組織のための行動」によるネガティブな側面を見てきました。

 これらによって企業としての競争力は言うまでもなく落ちてしまいます。また日本の支えている大企業がこの調子だと,日本の国際競争力が落ちてしまい,少し大げさですが日本経済にまで影響を与えることになります。

 

 これらの自分が所属する会社に不利益を与えてまで,『自分の所属する組織のために頑張れるモチベーションは何でしょうか?

 これこそ自己保身に他ならないと思うのです。

 

ポイント

会社全体に不利益を与えてまで「組織のために頑張る」理由は,その真意が「自分」への利益誘導だあるから

まとめ

 今回は,日本の大企業でよくみられる「組織のために頑張る」ことの真の意味と,その影響について記事にしてみました。同じように,大企業の不条理への共感とその理解の助けになれば幸いです。