こんばんは,えの吉です。ちょっと古いですが,先日の日経の記事で,日本では欧米と比べ博士取得者を生かせておらず,年収も低いとのニュースがありました。これをきっかけに日頃思っていた日本企業に対する問題意識に繋がりましたので,記事にしてみました。
「博士」生かせぬ日本企業 取得者10年で16%減: 日本経済新聞
引用:日経新聞 2019/12/8
日経記事:「博士」生かせぬ日本企業
記事によると,経団連の調査で加盟会社が選考時に重視したポイントとして回答したのは,専門性ではなく,コミュニケーション力などの人柄に関する項目がほとんどであったということでした。この結果,本来持っている専門性が生かされず,適材適所が行われない結果,日本の生産性,ひいては競争力が落ちてしまうという訳です。
コミュニケーション力ばかり重視する日本企業の人事採用
各企業の採用担当は,何も考えずこのような世界基準と乖離した選考基準を持っているわけではないはずです。真剣に会社のことを考えているのだと思います。
それではなぜこうなるのかというと,日本企業は人材の流動性が低いことに起因しています。日本企業では,就職後,そこそこうまくやっていれば,所属の部門が変わることはほとんどないです。当然,退職さらにそこから転職する人も少ないです。つまり,人材の流動性が低いということです。
日本の労働市場は人材の流動性が低く,同じ組織で長く過ごすため,何よりコミュニケーション能力が求められる!
すると,同じような組織の中で,「成果」をだすのと同じくらい,「人間関係をうまくやること」が重要となってしまいます。その結果,そもそも組織として結果を出す人材を集められなくなります。
さらに成果を出すより,社内でのコミュニケーションを重視し,所属している組織の中で自身の立ち位置向上のための努力ばかりをするようになります。それが1人や2人であれば影響は限定的ですが,そのかずが多くなり,社風と言えるまで蔓延してしまうと,当然会社としては力が落ちてしまいます。つまり,”ちゃんとしている”他社に対して競争優位性がなくなってしまうのです。
さらに言いますと,この競争力低下は日本の企業文化に由来しているので,日本全体に波及します。その結果,近年のデジタル化など時代や技術の変化が早い中で,企業の体制の変化や素早い対応ができず,日本全体の国際競争力の相対的な低下につながっている言えます。
日本の労働市場の流動性の低さが,変化の早い時代にあって,日本の国際競争力低下につながっている!
↓人材の流動性の低さとその問題については下記記事も書いています。
諸悪の根源の人材の流動性を低下させる要因とは?
それでは話を戻して,何が人材の流動性を低下させているのかというと,結局,終身雇用が元凶なのだと思います。しかし,自分を含めて40代まで来てしまった人にとっては,ようやく収入が増えてきたところで終身雇用崩壊はきつい,ということになります。
このように考える人が少数ならいいのですが,このような人が多数いることで,結局システムが変わらないということなのだと思います。残念ではありますが,自分を含め我々の世代の意識が変わらないと,人材の流動性の改善も難しいのだと思います。
諸悪の根源である人材の流動性を下げているのは,政府でも制度でもなく,国民自身の意識の問題!意識変革が求められる!
まとめ
今回は,日経の記事「博士を生かせぬ日本企業」をきっかけに,日頃日本企業の採用人事について疑問であった,「コミュニケーション力」なるものへの過度な重視について問題提起してみました。さらにこの原因には,日本企業の人材流動性の低さにあるのではないかと指摘させて頂きました。個人的には,これこそが日本企業が旧態以前とした体制から抜け出せず,近年ますます国際競争力を落としている大きな原因の一つだと考えています。一方,「コミュニケーション力の過度な重視」と「人材の流動性の低さ」は鶏と卵のような関係のため,どちらを変えようとしても,押し戻そうとする強い力が働いて,変えるのは難しいことも分かっています。
1人1人が真の利他意識を持って状況を変える行動をとることが求められているのだと思います。