江のブログ

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日本の美徳「おもてなし」に感じる違和感〜過剰サービスを強いていないか?〜

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 観光を中心としたサービス産業で古くから「おもてなし」という言葉はありますが,最近では日本が世界に誇る文化として,「おもてなし」を世界に発信しようという動きがあります。実際,東京オリンピックの誘致のときも,真偽は別として「おもてなし」のアピールが招致の成功につながったと言われています。

 しかし,現代社会においては,矛盾や日本を停滞させる原因になっている一面もあるのではないかと思います。 今回は,『日本の美徳』として肯定に語られることの多い「おもてなし」がもつ否定的な側面について考えてみました。

 

『おもてなし』に感じる違和感

 それではまず,「おもてなし」のイメージについて考えてみたいと思います。

 自分は「おもてなし」というと,勝手なイメージですが,次のような場面を思い浮かべます。

古き良き温泉旅館などで,「こんな狭いところですが・・・」と言って,できる限りのおもてなしをする。時には,採算を度外視した過剰品質ではないかというくらいのサービスもしてくれる。

 

 あたかも日本の美徳のように感じますが,ここで自分は思ってしまいます。

「そこまでしなくていいから,広くゆったりとした空間を与えて欲しいんですが・・・」と。

 

 さらに,

「客1人当たりの空間を狭くしてコスト削減して儲けようとしないで,そもそも快適な広い空間でもてなして欲しいのですが・・・」と思ってしまいます。

日本のあらゆるサービスで空間狭い理由~日本人のサービスの価値基準:おもてなし>広い空間

 今のは極端な例ですが,一般的に,日本のサービス業というのは,客1人当たりに割り当てられるスペースが諸外国と比べて狭いです。

これは,ホテル,旅館,カフェ,レストランなど,あらゆるところでそうです。

客1人当たりに割り当てられるスペースは,空間の快適性を決める重要なファクターであるにも関わらずです。

 

 それではなぜ日本のサービスは空間が狭いのか考えてみると,よく言われるのは,日本の国土が狭いから,そして人口が一極集中していて土地が高いからスペースのお金をかけられない,というのがあります。

 これは真実だと思いますが,次のような見方もできるのではないか思います。

 

 日本では,単純に「広い空間を提供する」というサービスより,「おもてなし」によるサービスの方が,価値が高いと思われているからではないかということです。

 

 どういうことかと言いますと,店側の視点でみたときに,客1人に広い空間を割り当てて空間の快適性でアピールするより,「おもてなし」に力を得れた方が日本人の客は満足する,ということです。

 つまり,日本のサービス産業の特徴として,店側,客側の双方で「おもてなし」というものが最重要ファクターになっているのではないかということです。

 

「おもてなし」の問題点

 ここまで「おもてなし」が日本のサービス業では重要なファクターであり,例えば空間の広さといった基本的なサービスの要素と比べても,優先度が高くなっている,ということでした。

 しかし,これらの特徴は次の2つ問題点があると思っています。

労働環境への影響

 1つ目が,サービスにおいて,「おもてなし」重視が,日本のサービス業の労働環境の悪化に繋がっていないか?ということです。

 

 客一人当たりの空間が狭いというのは,経営者視点で考えたときに,同じ空間になるべく多くの客を割り当てて,回転率を高めることになります。

 その結果,利益率は上がりますが,サービスの品質は落ちます。

 その低下したサービス品質の穴埋めに「おもてなし」が使われるのではないかということです。

 

 「おもてなし」の品質は,従業員の人数でもある程度カバーできますが,経営者としてはなるべく人は雇いたくないですし,また「おもてなし」経験者・熟練者による少人数対応で一人ひとりの負荷が大きくなりがちです。

 

 その結果,古い旅館を例にとると,長年の経験で「おもてなし」の型を身に付けたベテラン女将が,「お客」の前では,これ以上ない笑顔で「おもてなし」をした後,

そのやり方を知らない若手を同じ人間かと思うくらい豹変して厳しく指導する,というようなことが起こり得ます。

  これは別に旅館だけでの話ではなくて,仮に東京五輪が開催される場合も,あらゆるところで「おもてなし」マニュアルみたいなものが作られ,それが遂行できるかできないかが厳しく問われるということが起こりであろうと推測します。

ポイント

「おもてなし」を追求すると,過剰品質のサービスとなる可能性がある上に,労働側に過度に負荷をかけることにならないか

日本のサービス産業がガラパゴス化して国際競争力低下

 もう一つが,このようなサービスにおいて「おもてなし」が最重要という,ガラパゴス的なサービス業での価値観で,今後世界と勝負できるのだろうか、という心配です。

 

 日本の中では,「おもてなし」はサービスの中での重要ファクターなので,日本人を相手にした国内旅行向けにはいいのです。

 しかし,最近では国を挙げて,「観光立国」などといって,「おもてなし」をキーワードにインバンド需要を本気で取り込もうとしています。

 本当に「おもてなし」が日本人ではない,外国人の顧客満足度を高める要因として有効なのかどうかは考えないといけません。

 

  現に,観光大国と言われているフランスやスペインも,決して「おもてなし」と同義の「hospitality」という点で,優れている訳ではないです。

 しかし,観光の魅力として世界中の人々を引き付けているのはその「観光コンテンツ」です。実際に行ったことがある方なら分かるかもしれませんが,これらの国々では「hospitality」は平均以下といった感じです。

 またホテルの宿泊施設でも,部屋が広く快適です。その後に日本のホテルに泊まると,あまりの落差(部屋の狭さ)に閉口するほどです。

ポイント

日本が世界に発信する「おもてなし」を,本当に世界が求めているのか?相互マッチングを考えるべきではないでしょうか

  話を元に戻すと,今後,日本の経済力の低下や中国を中心としたアジア諸国の成長を背景に,外資によって日本のホテルが買収されていくことが考えられます。

 といった場合に,外国人の求めるサービスを知っている外国人経営者に導かれた外資系ホテルに勝てるでしょうか?

 これまでの同様に,日本向けにカスタマイズされた「おもてなし」に重点をおいた,日本の価値観を押し付けたやり方で,本当に外国人を満足させることができるでしょうか?

 かつて日本の携帯電話が日本国内の論理や価値観だけで突っ走って,最終的にスマホに駆逐されてしまったように,日本の観光産業に外資が参入して駆逐されないかが心配です。

そのためには,盲目的に日本の「おもてなしは素晴らしい!」とならずに,その良い面と悪い面を内在していることを理解し,必要に応じて外国のやり方も研究して,最適なサービスを提供していってほしいなと思います。

まとめ

 今回は,日本の美徳「おもてなし」に感じる違和感を記事にしました。日本の古き良き伝統文化を残すことは重要ですが,最近そういったものを自画自賛するようなコンテンツが増えた気がしています。今残念なことに日本の国際競争力が低下中であるからこそ,冷静に良いもの良い,変えるべきところは変えるという謙虚な姿勢が必要と思います。