先日書いた記事の続きです。問題の動画公開後にだいぶ関係者からのリアクションが出揃ってきたようですが,ホリエモンや茂木健一さんを除いて,オリラジ中田の味方なしといった状況の様です。
今回も備忘録的に,まずはオリラジ中田が言いたかったことを整理したあと,思ったことを書いてみたいと思います。
- 中田が動画でいいたかったこと?
- おかしな中田批判の例
- 中田の松本と「二人であっても面白くない」発言
- 翻って中田の提言への苦言
- ここ10年くらいで松本さんも変わった
- 中田の提言は10年前なら受け入れられたかもしれない
- オリラジ中田のこの先
中田が動画でいいたかったこと?
なぜ中田さんがこれほどまでに批判を受けているのか?正直,違和感を感じるところやつっこみどころもたくさんあると思います。が,ネットなどで見られる代表的な批判のほとんどが,動画の提言のポイントも理解しないで,表面的かつ的外れな批判に終始しているようにみえます。(経歴・経験ほか全て,聞いている側の大部分が中田さんよりレベルが低いので当たり前の帰結ですが)
中田さんが動画でいいたかったことは以下に尽きるのではないかと思います。
『日本のお笑い界の中でのダウンタウン松本人志の影響力が大きすぎてお笑いの多様性が失われていて,それを変える必要がある』
さらに,お笑い界に気付きを与えたり,同業者(芸人)の同調者を募ってムーブメントを作ることが狙いだっと思われます。(同業者には全くもって不評のようですが。。)
そしてお笑い界を変える「手段」として,世代交代の象徴として「お笑い賞レースで”審査員”をいくつか止めてくれ」と半分冗談も入れて言ったのだと思います。
おかしな中田批判の例
動画の趣旨をとらえ間違った末の,いくつかの的外れだなと思う「中田批判」を紹介します。
中田の「松本人志は審査員をいくつか止めてくれ」発言
→松本人志は皆に求められているから審査員をやっている
中田は「審査員をやめろ」といっているが,それは番組作成側や視聴者の望んだことで事実誤認している,というつっこみです。
しかし上で書いたように,動画内の主張では「松本さんが審査員をやることで,松本さんの好みに合うと思われる”空気を読むお笑い”に一元化されることが問題だ」といっているので,松本さんが審査員を望んでいるか?嫌々受けているか?は関係ありません。皆に求められて審査員をやっているのは事実と思いますが,そもそも検討はずれのツッコミです。
『IPPONグランプリ』と『人志松本のすべらない話』は賞レースではない」「松本さんが“審査員”をしているのは『M-1』と『キングオブコント』だけ
審査員をやめろといっているが,中田の言ういくつかはそもそも”賞レース”でないというツッコミです。
これも上の例と同じ理由で検討外れです。指摘しているのは,お笑い賞レースにおいて「何が面白いか?」の価値基準に松本人志が大きな影響力を与えていること,です。
与える影響力は審査員であることでより直接的になりますが,そうでなくても番組での発言で「何が面白いか?」の価値基準に影響力をもちます。なので,「そもそも審査員でない」というのは的外れです。
いずれも,松本人志への批判→松本本人は悪くない!という思考回路だと思うのですが,例の動画の中で中田は「松本が審査員を座をつかんで離さない」という趣旨のことは言ってないです。
正しいかどうかは別として「お笑い界が松本さんの価値観で染まっている」、それを変える手段として「審査員を降りて貰いたい」ということであって,松本本人が意図してその状況を作っているかどうかはどうでもいいのです。その点からいえば,動画の意図は松本本人というよりその価値観に踊らされている番組制作側や他の芸人たちに行動を促す発言だった,と思われます。
その他,邪推して「(松本への)当たり屋ビジネス」とか「炎上商法」とか言われているようですが,いずれも理由を書くのもばかばかしいくらい低レベルの批判です。
中田の松本と「二人であっても面白くない」発言
その後の,ある意味批判へのアンサー動画で,ポイントであった松本人志「テレビとかYouTubeとか関係なく2人だけで話せばいいじゃん 連絡待ってる!」の投げかけへの回答がありました。
直接2人であってもそんなに面白くない
そこでの反応がさらに火に油を注いでしまったようです。また,せっかくの和解の投げかけであり歩み寄りを断るような形になってしまったので当然と言えば当然の批判とも言えます。
しかしこの中田の対応も本人の置かれた立場を考えれば理解できます。2人で会って仮に和解したとして,株が上がるのはそれを持ち掛けた松本の方です。中田は牙を抜かれ,問題の動画も削除され発言撤回かのような対応をとることになります。またイメージとしても,ここ最近築いてきた,大御所にモノ言うキャラのイメージを全否定することになる,あるいは少なくともそのように受け取られます。
つまり2人で会うことはデメリットの方が大きく,ですので安易に受け入れられないのだと思います。
翻って中田の提言への苦言
ここまで中田に擁護側の発言でしたが,つっこみどころや勘違い,作戦ミスを見受けられる部分も多々あります。(ドストエフスキーのくだりの削除などはどうでもいいとして。。)
確かに,中田が言うように日本のお笑いは独特で,特に今の中堅以上のトレントの芸風は松本さんに強く影響を受けた人が多いと思う。
個人的な意見としても,こちらの記事に書いたように,日本は様々な分野で一流だが,お笑いだけで世界に殆ど通用していない。
これは非常に残念なことだし,実際にやっている芸人の中にも忸怩たる思いの人達はいるのではないかと思う。実際に,海外進出を試みる人たち(ピース綾部,渡辺直美)はその思いがあると思うし,それを体現するように,松本さんが中心に広めた空気を読む笑いとは異なる芸風の場合が多いです。
最近では,とにかく明るい安村の芸は,漫才やコントではないし,空気を読む日本のお笑いとは無縁ですが,イギリスのゴドタレントという番組で人気となりました。今はともかく,10年前やさらにその前の松本さんには絶対に認められなかった芸だと思います。
ここ10年くらいで松本さんも変わった
今10年前と書きましたが,実際のところ,松本さん本人も今はそれに気付いているのではないと思います。その間いろいろ,先のことを考えたり,はたまた映画で大失敗したりして思うところもあったのだと思います。
だから,最近は意識して多様なお笑いを認めるような変化をはっきりと感じられるし,M1などではときどきみられる漫才とは言えないような芸に対しても比較的寛容で高い点をつけていたりします。
昔では考えられなかったことだし,そもそも昔のダウンタウンなら全員低い点数つけて,そもそも審査員にならなかった,できなかったと思います。
中田の提言は10年前なら受け入れられたかもしれない
基本的に中田の言っていることは正しく,松本リスペクトで育った若手芸人が今のお笑い界を構成している結果,ガラパゴス化した狭い価値観のお笑い界となってきた。それは少なくともこれまでは事実だった。Youtubeで意見することで賛同を得て,ムーブメントを起こしたかったはずで,それがリスクのある動画をアップした狙いのはず。
中田のミスは,その原因としている当の松本が今はずいぶんと寛容になっていて,多様なお笑いを受け入れようとしていること。
実際,松本人志が認めるお笑いの範囲がここ10年くらいでずいぶん拡大している。それと平行して,昔はガキの使いやごっつええの出演者の内輪だけに見えた他芸人とのつきあいも,若手芸人までかなり広がっているように見える。
そして,若手芸人にもそれ状況に応えて,松本リスペクトに加え,松本LOVEになってきている。そんな若手芸人の中での松本愛が高まっている中での今回の動画だったので,果たして全く受け入れられず四面楚歌になってしまったというのが今回の全貌だと思います。
なので,松本が変わる前の10年前に中田が同じ言説を展開していたら,もう少し受け入れられたのではないかと思われます。
そもそも,近年の松本と若手芸人との関係が極めて良好な中,中田だけ未だにその輪に入れていない,認めて貰っていないという現状も,今回の動画作成の動機になったと思う。
なので,元々不利な状況の中での動画アップであったのは見越していたはずだが,思った以上に賛同が少なかったというのが,その後の動画の一部削除や,動画更新の長期間ストップにつながっていると考えられます。
オリラジ中田のこの先
ではオリラジ中田が松本を逆転するように見えない,それ位不利な立場になってしまったように見えます。実際そのようにも見えるので,いじめ大好きなネット民が中田への追撃にいそしんいるようです。
しかし実際は逆転の可能性は十分にあると思っています。ダウンタウン松本さんも60歳です。あと10年したら70歳です。さすがに,頭も衰えて,今と同じ芸風ではいられなだろうし,カリスマ的なポジションはキープできないでしょう。
また、人は直ぐに過去を忘れます。考えはブレブレで,様々な事象の積み重ねで簡単に考え方が変わります。政治の世界では,10年ほど前は民主党を国民の過半が支持して民主党政権があったような国です。中田へのネガティブなイメージは,いずれ忘れさられるし,新しい出来事で簡単に上書きされるでしょう。
という訳で今後,オリラジ中田が天下取るかは本人の松本さん以外の芸人に対する競争の話なので分かりませんが,逆に言うとそれ次第なので,どうなっているかは分からないというのが今回の結論です。