江のブログ

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オリラジ中田『【松本人志氏への提言】審査員という権力』を観た感想

今ネットで話題のオリラジ中田敦彦のYoutube動画をみた感想を備忘録的に書いてみました。個人的にはそもそも最近テレビを見ないのですが,ダウンタウン松本は昔かなり好きだったのと,オリラジ中田はYoutube大学の良さげな動画をときどき観る程度です。ですので,今はどちらのファンということもなく,中立的な視点で状況を分析できると思います。

 

今回のYoutube動画概要と世の中の反応

今回観たのはこちらの動画です。

www.youtube.com

まずオリラジ中田のチャンネルは2つあり,1つは「Youtube大学」でもう1つが「トークチャンネル」なんですが,今回の動画は明らかにトークのコンテンツにも関らず,チャンネル登録数が多いYoutube大学で発信してきたことから,よっぽど強い思いがあったか,物議をかもす狙いがあると思われます。

 

肝心の内容は要約すると以下です。

最近「The Second」という16年以上のベテラン芸人に焦点をあてた漫才の賞レースが民放で放映(2023年5月20日)されました。ダウンタウンの松本人志が名目上はアンバサダーという審査側とは切り離された立場でしたが,実質的には審査かそれ以上の権限を持っている,というところから話がはじまります。

若手をターゲットとしたM1、さらにはそれ以上の年齢層の芸人を対象にした賞レース、さらにコント,大喜利(ipponグランプリ)まで、あらゆるお笑い賞レースで,審査員のど真ん中に松本人志がいる。

お笑いにはオリラジの芸風含めた多様性があるが,松本が審査員としてお笑い良し悪しを判断することで,お笑いの価値観が画一化している。多様なお笑いそれぞれが本来成功する可能性があるのに,狭いお笑いの価値観のため可能性を摘み取ってしまっているのではないか?と問題提起しています。さらに,翻って多様なお笑いの可能性を摘み取っているのは、漫才を中心とした狭いお笑いを正とする価値観を広めた、松本人志が原因なのではないか?という主張でした。

 そして動画タイトルにもある”提言”として,『お笑い賞レースの審査員を(いくつかは)止めて欲しい,他の芸人にも同じ声を上げて欲しい』ということでした。そして、声を上げて欲しい他の芸人として,霜降り明星の粗品を挙げてさらに炎上という顛末でした。

 

中田の主張のおかしな点

中田の主張を整理

 中田の主張は『漫才至上主義が問題であり,それを定着させたのが松本人志』ということ,松本自身が実際にはコントやそれ以外もやっていることを考えると漫才以外含めても『松本自身が面白いと思うお笑い以外,認めてもらえない。それによってお笑いの多様性、可能性が失われている,次世代の台頭を阻害している。』ということでした。その手段として、『松本自身がお笑いの価値を決める象徴である賞レースの審査員や,それに準じる立場から辞するべきだ』と提言しています。

 では、中田の主張の通りに,漫才至上主義でない,それ以外のジャンルもごちゃまぜにしたような”お笑いの賞レース”が生まれることで何か良い影響があるでしょうか?

 松本が今のお笑い賞レースの番組から抜けたら,漫才以外のお笑いの人気がでたり,若手の可能性が広がったりするでしょうか?

ある程度フォーマットを決めないと賞レースにならない

 大前提として,松本人志うんぬんは関係なく,漫才だったりコントだったりと,ある程度ジャンルを絞って評価軸を決めないと,そもそも賞レースにならないという問題があります。

 賞レースである以上は点数付けが必要ですが,仮にいろんなお笑いを認めた賞レースをやったとすると,ジャンルの違いが大きすぎて優劣をつけるのが難しくなります。例えば,漫才とコント,一発ギャグ,さらにはオリラジのような芸を同じ評価軸で点数付けできるでしょうか?

 同じ評価軸の設定が難しいので,”観客の笑いの量”で優劣つけるという単純な基準を設けることもできるとは思いますが,それでは基準は笑った人の数なのかとか,笑い声の大きさななのかといった難しさに繋がるし,不公平感は解消できないでしょう。少なくとも,賞レースとして重要な勝負事としての面白さは失われてしまいます。つまり,芸をごちゃまぜにした賞レースというものは成立しないということになります。

 そのため,同じ土俵(ルール)でお笑いの勝負をするとなると,漫才や大喜利がマイク一本でできるので誰でも参入しやい,賞レースとして適しているということになります。なので,賞レースが漫才という土俵で行われるのは至上主義でもなんでもなく,仕方ないことです。

ゴッドタレントとの違い

ちなみに,いろんな芸を詰め込んだショーは海外にはあり,先日「とにかく明るい安村」のネタが大うけした”ゴッドタレント”などがあります。あれも勝ち抜き勝負なので賞レースではありますが,評価軸は実に曖昧で、4人の審査員と観客の反応に依存したものになっています。

 あれが成立するのは,日本のお笑い賞レースと違って,世界中からお笑い以外の分野まで範囲は広く,選りすぐりの芸が集められているので,必然的にクオリティが高いということです。つまり,審査結果など重要でなく,披露されるパフォーマンスのレベルが高く,さらに審査員のコメント含めてエンタメだということです。

 日本でも同じことやればいいのでしょうが,もはや漫才賞レースとは別物ですし,日本のお笑いだけでそれをやっても,品質が担保されるとは思えません。例えは良くないですが,MLBがあるのに,勝負事やドラマなどの要素を欠いた普通の高校野球の試合を誰がみるか?という話です。

松本が審査員をやり過ぎる弊害?

 賞レースが漫才,大喜利,コントという狭い同じルールでの土俵で行われるのは仕方ないことが分かったとして,中田さんは「松本が審査員に選ばれ過ぎていることが問題」だとも主張しています。

 確かに,偏った好みや価値観を持った人間が審査をすることで,賞レースでの結果の判定に偏りがでます。逆に仮に審査員から松本抜けば,場の空気や審査の基準に違うものになるだろうし,”若手の登竜門”である賞レースで多様なお笑いが認められる方向に向かうと思われます。

 

 しかし,問題は松本が抜けてしまうとその賞レースの価値や人気がガタ落ちする可能性が高いということです。そのため,若手の登竜門の場である賞レース自体がなくなるリスクがあるということです。

今日の日本のお笑い賞レースは、ガラパゴス化した日本の空気を読むお笑いのトップであり教祖の松本人志の存在がベースとなっていて,また出演側の芸人からも尊敬受けており、視聴者からの信頼も厚いです。つまり,お笑い賞レースは「松本のカリスマ性」ゆえに人気(視聴率)を稼げているのであって,松本がいなくなったらその賞レースの信頼度は人気も急落する可能性が高いです。

 見方を変えると、凋落するテレビ業界の中で,現存するお笑い賞レースも本来なら凋落するはずだったのが,松本人志のカリスマ性のお陰でなんとか人気を保っている,その弊害として松本の趣向が反映され過ぎる部分もある,というのが客観的なお笑い界の実態だと思われます。

 松本抜きのお笑い賞レースにすると人気が落ちて無くなるので,松本に審査員を辞めて欲しいという中田の提言は若手の将来を思ってのものだったのに,”若手の登竜門”自体がなくなり可能性を奪ってしまう結果になってしまいます。

 

中田叩き・松本擁護の世間の反応に感じる違和感

 ここまでが動画の内容ですが,動画アップの翌日に松本人志本人からTwitterで反応があったようです。

松本の反応「テレビとかYouTubeとか関係なく2人だけで話せばいいじゃん 連絡待ってる!」

日本人から好感の持たれやすい”大人の対応”を取ったことで,(一部の中田のファンや権力(松本)叩き好きの人たちを除いて)総じて「中田悪し」の流れになっているようです。

 それと同時に,松本のTwitterの”大人な対応”から「かっこいい」などの松本への称賛意見が多く見られます。

 確かに,今回のオリラジ中田の動画をコトのスタート地点として見るならそうですが,1ヶ月前の,こちらも中田の動画「次長課長河本さんの誕生日会で・・・」を観ると印象がだいぶ変わります。

www.youtube.com

 

 この動画では、中田が千原ジュニアとユーチューブで共演した後、この共演について松本がお前なんで中田とコラボしてんねん!”とジュニアに激怒した、ということが語られています(動画では、松本と千原の名前は伏せられていますが)。

少なくともこちらの松本の行動は「かっこよくない」と思いますし、こういった事象や過去のオリラジは面白くない発言などがあっての中田の行動は理解はできます。

 また,こういった背景を見ずに,中田の動画スタート→松本反応→評価という思考回路しかできない世論にもうんざります。

(これはロシアのウクライナ侵攻と同じで,ロシアの侵攻スタートで見たら一方的にロシアが悪く見えるがそうでない背景があるのと基本的には同じ構図です。まぁ、この辺の分解能がない世間一般のどうにもならないので仕方ないとして、)ちゃんと見ればこのような背景があるということです。

総論

 最初の動画に話を戻すと,総じてオリラジ中田が実に悪い手を打ってしまったなぁと思います。

 1ヶ月前の2つ目の動画の最後に,松本から“お前なんで中田とコラボしてんねん!”とある意味攻撃されたことを逆手にこれを暴露し,「焦っちゃって、悪い手売っちゃってるんじゃないですか!観てる~」と松本を挑発する優位な立場にあったのに,今回の動画では表情も余裕がなく,自身のマイナスにしかならないように見える手を打ってしまいました。

 1ヶ月でなぜこのような変化がおて,悪手を打つに至ったのか?実に謎です。中田の暴露動画以降になにが,関連するネガティブな事象があったのかもしれません。ですが兎も角,松本からの投げかけ「テレビとかYouTubeとか関係なく2人だけで話せばいいじゃん 連絡待ってる!」からリアルに対話に繋がり,最終的にこの2人が和解したとなれば,良いなと思います。

今回の動画からうかがえる中田の余裕の無さから,松本の反応を見越したものではないと思いますが,そうであれば相当の策士だと思われます。どのように事態を収拾するのか、楽しみです。