江のブログ

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映画『プペル』を観た感想と,今後の西野亮廣さんのプペル関連ビジネスがうまくいかないと思う理由

 先日今更ながらAmazonプライムで無料で観れたので,遅ればせながら西野亮廣さんの「プペル」を鑑賞してみました。実際観てみて,世間の評価より良かった,というのが正直な感想です。商業的にも成功しているようで,西野さんがいろんなところで語っているように,利益度外視の絵本から映画のマネタイズの展開の戦略はうまくいった,ということだと思います。

 しかし,こちらも西野さんが提唱するように、『プペル』のブランドを使って様々なビジネスを展開するみたいですが,これが成功するか?というとそれは甚だ疑問に思いました。プペルはさながら商業的に作られたハリウッドアクション映画のようでもあり,いかにも商業的につくられた作品然としていて後世に残らない一過性の作品という印象です。

 

プペルの感想と評価

 まず映画の感想ですが,ストーリーがどこが好きだったかというような細かい話はおいておいて,全体的にさすがお金がかかっているだけあって,よくできているとの印象でした。序盤につかみのアクションシーンがあり,伏線と回収,ストーリーの意外性も少しあり,最後の山場もあり,とアニメ映画に求められる要素を高次元で達成していると思いました。

 好みの問題があるにしても,作品の品質として考えたとき,これを駄作とか,5点中1~2点つけるのは,原作者へのアンチもかなり含まれていると想像できます。

西野さんの今後の戦略

そもそも西野さんが絵本に手を出した理由と,その後の戦略は次のようなものだったようです。

売れる絵本は,古典が多く長く売れ続ける。絵本のベストセラー「はらぺこ青虫」のように,絵本の定番として一度認知されれば,子育て世代にはずっと売れ続ける。

ここに目をつけて,クラウドファンディングなどで調達した資金力を使って,圧倒的にリソースをかけて高品質な絵本を作って絵本界のトップを取る。

かつ,その際,絵本としての収益は度外視して,その質と無料公開などを通じて認知度を上げる。

最終的に,そのIPを使って映画公開によって,リターンを得るという戦略だったようです。今後は,プペルを使って,歌舞伎やミュージカルでマネタイズしていく戦略のようです。さらにはディズニーに勝つという最終目標もあるようです。

 

 映画はうまくいった?として,それに続く上記のプロジェクトがうまくいくかというと,そうは思いません。

 

今後の『プペル』関連プロジェクトがうまくいかないと思う理由~とにかく印象に残らない

なぜそう思うのか?というと,西野さんのプペル展開の戦略の前提になっているのが,映画を見たユーザーに「続編も見たい!」「別の形態でも,プペルを観たい!」と思わせることだと思うのですが,ここに問題があるように思います。

確かに映画を見ると,「あーよくできているな」と思うのですが,一過性でとにかく印象に残りません。Youtubeで西野さん関連動画とか斜め観したりもしてるのですが,そこで記憶に刷り込まれるはずですが,それでも記憶のかなたに追いやられるほど,印象が薄いのです。

なんでここまで印象に残らないのか,次の考えてみました。

①心をえぐられない凡庸なストーリー

1つ目の問題が,シナリオの構成が優等生的で特別感が全くなかったということです。例えば,最近見た映画だと「どらえもん」がありますが,ある場面の次の場面でもキャラの個性の強さを生かした展開が考えられます。しかし「プペル」には,その選択肢の多さや余裕を全く感じませんでした。

頭の良い人たちが過去作の分析に基づいて創った意外性のないストーリー,という印象で,特別感は感じなかったです。

 

煙突町やごみ人間など設定は独自性はあるのですが,結局入れ物に過ぎず,新しさは感じませんでした。

②映画のメッセージの方向性

 2つ目が,映画のメッセージがどの年齢層に向けてのものか良くわからない,という問題です。

 少しネタばれになりますが,この映画のメッセージは分かりやすい言うと,「夢をあきらめるな」というものです。これ自体は万国共通,老若男女に刺さるメッセージです。

 しかしこの作品では,西野さんの怨念めいたものも反映されているためか,それより現実世界を反映した夢を否定する大人たちへの批判がむき出しになっているように見えました。言い換えると,夢をあきらめた大人が,夢をあきらめない大人を否定することを痛烈に批判しています。

という訳で,この映画は子供向けに見える絵本からスピンオフした割には,反骨精神を持った大人に刺さるメッセージを発しています。

 

このメッセージ自体,否定する気はないですが,それ以外のストーリーに大人向けの作品としてみたときのストーリーの成熟さ,驚くような独自性を感じることはありません。また,ダメな大人を批判するメッセージを持つ作品を子供たちにもおすすめしたいとも思いません。また,子供もそれを観たいと思わないでしょう。つまり大人にしたら少し安っぽい,子供にも刺さらない,となってしまっています。

 ということで,今回の映画が今後プペルのIPを活用したビジネスを展開するための旗本的な存在なのだとしたら,誰に向けたメッセージなのかが分かりにくいと思いました。

③作品としてのレベル

 では他の名作アニメ(ワンピース,進撃の巨人,Hunter&Hunterなど)に肩を並べるレベルかという,これが全然その域にないという感想になります。

 

 まずキャラクターに魅力が感じられません。これはバトル漫画・アニメでないのも原因の一つなのだと思いますが,主人公をはじめとしたキャラクターが物語の駒にしかなっていないので,印象に残りにくいです。今だに,主人公をはじめとしたキャラクター達の性格とか個性が良く分からないし,見た直後にも関わらず殆ど頭に残っていません。

 これは映画のように2時間枠だと,漫画のようにキャラ描写を詳細に行う時間ないことも原因だと思います。プペルの場合,絵本がありますが,漫画や小説のように複雑なストーリーを伝えられるメディアではそもそもなさそうです。

 

 ストーリーも①で書いたように,他作品の良いとこどりをしたような内容で秀才的ではあるけれど,天才的ではないです。

 例えば世界中でヒットしている「進撃の巨人」も,見方によっては過去のアニメや映画のいいとこどりとの見方はできないことはないです。しかしなにより,世界感や設定の拘り,その結果寄せ集めで終わらない全体としてのまとまり感など,「プペル」とは比較になりません。

 

 つまりプペルは魅力のないキャラクターに加えて,過去作のいいとこどりの秀作なので,世界で熱狂的に受け入れらることはないのではないかと思います。国内での熱狂は,主体性がなく流行りに乗りやすい日本の国民が,芸人時代から西野さん自身のストーリーを知っているこそ得られた人気にすぎないと思うのです。

 

そもそも,オンラインサロンを原資とした資金があれば映画単独でもできたのではないかと思いますので,映画のために絵本「プペル」の成功が必要だったのか?さら疑問なところはあります。

④戦略自体がいけてない~遅れてきたハリウッドの日本アニメ版

 最後に,西野さんが提唱するエンタメにビジネス的な発想持ちこむを戦略自体,ハリウッドをはじめとしたアメリカのエンタメ業界がさんざんやって来たことだと思うのです。これまでの日本のエンタメ界があまりに無策であっただけで,映画と音楽のタイアップ,話題性に重きを置かれるイメージ戦略,桁はずれの予算をかけて作られる作品と,共通点が多く見られます。

その結果はハリウッド映画は,金をかけて一過性の話題をさらうだけの深みのない作品,ということでイメージが定着してきています。同じように,プペルに対しても正にそのような印象を持ってしまうのです。

まとめ

 今回は今更ながら,西野亮廣さんの「プペル」を見てみました。客観的に見て,アニメ映画としては3~4点(5点満点)を得られる秀作ではあると思いました。しかし,印象に残らないキャラクターやストーリー,誰に刺さるか分からないメッセージ性など,海外を熱狂させている他の日本のアニメ作品と比べると,到底そのレベルにないと思いました。

それには,映画化前の振りとなるメディアが「絵本」という,ストーリーを語る上で不利な形態であることも原因と考えられます。

以上を考えると,今がピークで,今後はうまくビジネス展開ができないことが予想されます。おそらくそのように,今後なっていくと思いますが,その展開を今後見ていきたいと思います。