江のブログ

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在宅勤務・テレワーク禁止,出社強制の流れに感じる違和感と理由

 昨今の,コロナ明けをキッカケとした,海外大手IT企業での「週5日出社」のニュース,その影響を受けた国内企業での在宅勤務・テレワーク禁止、出社義務化の流れに感じる違和感とその理由についてまとめてみました。

 

世の中の変化

 コロナが明け,在宅を制限または禁止して出社要請する企業が増加しています。コロナ禍では多くの企業がリモートワークを導入しましたが,状況が変化した今,コミュニケーションの円滑化やチームワーク強化を目的として,再びオフィス勤務を求める動きが見られます。さらに,海外の大手IT企業の出社要請のニュースです。米Amazon. com(アマゾン・ドット・コム)が世界中の従業員に原則として「週5日出社」を求める方針を出したのをはじめとして,米Google(グーグル)や米Meta(メタ)など他の米テック大手も従業員に出社回帰を求めているとされています。日本でもこういった報道が盛んにされ,国内企業でも出社回帰を検討する企業が増えています。以上のような背景もあり,今後このトレンドは加速するものと考えられます。

 

 最初に個人的な見解を言うと,出社することによる対面コミュニケーションのメリットは間違いなくあると思います。しかし,それを相殺するデメリットが多い場合は,在宅を選ぶべきというのが基本的な考えです。在宅と出社をミックスしたハイブリッド勤務など,業務効率が最大化できるやり方を模索すれば良いだけです。間違っても自分たちがどちらかの方法で上手くやってきたからどちらかのやり方であるべきだ,という(従業員ではなく)決定者の個人の主観で決めるものであってはなりません。

 

それでは,なぜ極端な在宅勤務(テレワーク)の禁止,出社の半強制といった極端な意見がでてまかり通りつつあるのでしょうか?個人的には,特に日本でそのような言説ができることに強い違和感を感じています。その理由について考えてみたいと思います。

 

経営層は出社回帰の考えを持ちやすい

 在宅の是非を決める決定権のある人達は経営層,会社の論理で言えば出世した成功者です。年功序列の日本の人事システムを経験してきた彼らは,もれなく働き盛りの30台,40代を毎日出勤して仕事をしてきた人達です。会社で高い役職を与えられている以上,自分は成功者だと,自分のやり方は正しかったのだと多かれ少なかれ自認しています。

そこに新しいシステムが導入されると,不慣れなのでうまく対応できな人もいます。新しいやり方に抵抗がなく,オンラインでの働き方に馴れた若手より不器用な対応しかできないかもしれません。テレワークで自分のパフォーマンスが落ちていると感じたときに,新しい仕組みに対応できない自分が悪いのではなく,その新しい仕組み自体が悪い,と考えてしまいがちです。

 これは日本の選挙において,年寄りにメリットがある政策ばかりが通りやすいのと同じような理由です。

海外の出社回帰のニュースが与える影響

 日本での出社回帰の議論の際ででてくるのが,海外の大手IT企業の出社強制のニュースです。古き悪しき日本の根性論にも一見一致する「出社強制」というのは,「対面至上主義」の日本の古い経営者にとっては飛びつきたくなるニュースなんだろうと思います。また,日本のありがちな,海外から逆輸入されて初めて良いモノと評価する,あるいは海外のものや情報をありがたがる文化,性質もそれを受け入れやすい土壌を作っていると思います。しかも,世界の技術革新をリードする米国のIT大企業が提唱しているとなれば説得力も増すというものです。

 ただ,自分は2つの観点で違うのではないかと思っています。

日本人は相対的に真面目

 海外での観点の1つとして言われるのは,対面でのコミュニケーションの効果と同時に,テレワークだと「従業員がサボる」ということです。しかし,日本人は明らかに外国人より労働に対して誠実で真面目です。日本人は会社へのエンゲージメントが低いというのは良く言われていることですが,これはやり甲斐やモチベーションが低いということであって,決して仕事怠けているということではありません。

 日本人は相対的に在宅中も真面目です。やる気があろうとなかろうと,在宅勤務中も「サボっていると思われたくない」同調圧力からも,年休とるにも同僚への迷惑を考えて躊躇うような企業文化からも明らかです。つまり日本人はもともと在宅してサボってないので出社しても,海外で言われている程には効果はないと考えられます。満員電車など日本の通勤環境も悪いこともなおさら,出社回帰の効果は小さいと言えます。

海外のオフィスは日本より総じてクリオティが高い

 2つ目が,そもそもオフィスのクオリティが日本と海外とでは違います。私は何度かシリコンバレーのオフィスに訪問したことがありますが,日本のような窮屈な事務所はみたことがありません。平社員ですら,ゆったりとした個人スペースを与えられて,とてもうらやましく思ったものです。あれだけ良い環境を企業が用意しているのだから,経営者として優れたインフラが放置されているのは勿体ないから使って欲しい,と思うのも頷けます。

 一方日本のオフィスは,もちろん会社は会社の中の組織によっても異なりますが,対抗型の島型オフィスが主流で,しかも島のスペース効率を上げるために島の間隔が狭く設計されがちです。自宅の方が良い環境を構築できている人が,わざわざ業務効率が落ちるオフィスで働くのは費用対効果が悪いです。

 

在宅・出社の最適なバランス

 最も重要なのは,在宅・出社の最適なバランスを取ることで個人,さらには会社・組織として最大のパフォーマンスをあげることです。

在宅と出社のバランスはどうすれば良いのでしょうか?個人的な結論から言うと,会社の業態や個人の事情,性格・性質によって様々なので一律で決めるのは不可能ということです。以上の議論から,在宅と出社のバランスを考える際は,少なくとも以下を考慮する必要があります。

 

・全体の業務の中で出社しないとできない業務はどれくらい含まれるか?

・対面コミュニケーションで得られる効果は毎日必要なものなのか?

・オフィスの仕事環境は在宅より良いものとなっているのか?

・通勤時間や混雑状況などの通勤の負担

・子育てなどのスポットでの緊急対応が必要ないか?

 

この中で,少なくとも在宅での仕事環境,通勤時間か混雑具合およびそれによる疲労への影響は個人により異なります。個人により異なる以上,組織全体に一律にルールを適用するやり方では,個々人が在宅と出社のバランスを適正化するのは不可能です。

 在宅と出社のバランスを個人に判断に任せると,当然個人の判断が間違っていてパフォーマンスを大きく落としてしまうような事態もでてくるでしょう。その際は,冷静かつ客観的に低い査定をして,奮起を促すとともに働き方についてもアドバイスを与えば良いと思います。間違って,そのような個別事例を理由に全体に一律に適用するルールにすべきではありません。

まとめ

 以上のことから,最も重要である「会社・組織全体としてパフォーマンスを高めること」を達成するには,在宅・出社の最適なバランスを取ることが重要で,さらにそのためには,在宅・出社の選択肢についてはルールで保証した上で,個人で自己責任で在宅・出社の最適なバランスを選択させる重要ということです。

 業務によっては出社が必須の場合もあるでしょうし,個人で進められるパソコン業務のみであれば在宅の方がはかどる場合も多いでしょう。業務内容で在宅の向き不向きがあったとしても,上記でも書いた個人の事情・都合でも在宅の向き不向きは左右されます。また性格的にも毎日,たくさんの人と合う方がモチベーションが上がる人もいれば,最小限のコミュニケーションで自分の作業に集中したい人もいるでしょう。

 そのような多様性を受容して,パフォーマンス最大化を目的とした在宅・出社のバランスの判断はルール化せず個人に任せる。その結果は,個人の査定という客観的な評価により自助努力によるバランスの最適化を促す。必要に応じて上司が相談に乗る(強制は厳禁),というのが良い落としどころではないかと思います。