江のブログ

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【イメージで理解!】分かりにくい『限界利益』の意味と使い方

 『限界利益』という言葉はご存じでしょうか?理系でも会社である程度の役職になると,経営指標や会計用語のことを分かってないといけなくなります。

 そんな中で分かりにくいのが『限界利益』という言葉。損益分岐点は定義も意味もわかりやすいのだけど,限界利益はなぜその指標が必要なのかすら分からない。なので定義もすぐに忘れてしまう。今回は,そんな限界利益のわかりやすいイメージの仕方についてまとめてみました。

 

1.教科書的な『限界利益』の説明

 まず損益分岐点が分かっていれば誰もわかるのがこの関係。「原価」=「固定費+変動費」なので,

 

  • 売上ー原価 = 売上ー(固定費+変動費)=粗利益

 

 では限界利益というのは何かというと,これです。

 

  • 売上ー変動費 = 粗利益+固定費=限界利益

 

 限界利益とは,「売上から変動費を引いたもの」であり,「粗利益と固定費を足したもの」です。そしてこの関係を絵にすると,良く見るこの図になります。

 

 この図で,『限界利益』は売上から変動費を引いたものなので,水色の矢印で示した大きさになります。

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よく見る『限界利益』の説明図


 ここで思ってしまうのが,『で,何がしたいの?』ということ。

 また,せっかく図示したのにイメージが掴めないということです。

 

 簡単な式をこねくり回しただけなので定義は分かりますが,これが何を意味をするのか?これを使って何がしたいのか?何が『限界』なのか?が分からないのです。

また,本質を理解しないことで,限界利益(=「利益+固定費」)が高いほど良いなら,「固定費」を増やしていけばいいのか?といった的外れな誤解を生んでしまったりします。

 

2.『限界利益』のわかりやすいイメージの仕方

 それでは限界利益はどのようにイメージしたら良いのでしょうか?まずは粗利益については最低限把握する必要があります。

 

  • 粗利益=売価ー原価:*原価=固定費(人件費など)+変動費(原材料費など)

 

 その上で結論をいってしまいますと,

 

ポイント

 限界利益とは,粗利益と比較すると,人件費などの固定費を差し引く前の利益(粗利益+固定費)です。これはつまり,固定費(人件費など)のコストを除いた純粋な商売(売価ー原材料費)による利益です。このため,限界利益から,純粋な商売自体の収益性のラフなポテンシャルが分かります。

 

 限界利益とは,粗利益,営業利益・・・などたくさんある『利益』関連の用語の中で,最も大雑把な利益の見積もり方,ということになります。

 

 これがより深く分かるように具体例を見ていきます。

 

ラーメン店の限界利益と粗利益

 あなたはラーメン店の店主(経営者)で,1杯当たり材料原価100円価格600円のラーメンを売ってたとしましょう。すると1杯当たりの利益は500円です。月1000杯売ったら50万の利益です。

 

  • (600[円/杯]-100[円/杯])×1000[杯]=500,000円(限界利益)

 

 「ちゃんとラーメンの材料原価まで考えて50万が手元に残った。利益が50万出たので,貯金しよう!」・・・・って,できませんよね。

 

 その50万を使って,従業員の給料や光熱費など,つまり固定費を払わなくてはいけません。

 実はここの答えがあり,この例では,うっかり(粗)利益と勘違いした,人件費などの固定費を差し引く前(利益+固定費)の利益,50万こそが限界利益なのです。

 

 ちなみに人件費などの固定費が300,000円なら,いわゆる粗利益は20万円です。

 

  • 500,000円[円]―300,000円[円]=200,000円(粗利益)

 

 限界利益と粗利益の違いは,数式ではなく時系列でイメージすると分かり易いです。

 ラーメンという商品自体を売ったことで得られる利益が限界利益です。次にこの限界利益を使って固定費を支払ったあとの利益が粗利益と考えることができます。そして,粗利益から販管費を引いたものが,営業利益で・・・と続きます。

 

つまり,利益関係の用語を並べていくと,このような関係性になります。

限界利益=売上ー変動費

粗利益限界利益ー固定費

営業利益粗利益ー販管費

経常利益営業利益ー営業外損益

 

 このことから,限界利益とは,粗利益,営業利益・・・などたくさんある『利益』関連の用語の中で,最も大雑把な利益の出し方と言えると思います。

 

3.もう一歩『限界利益』の理解を深める 

 別の見方をしてみます。大小関係で言えば,かならず限界利益>粗利益となります。つまり,固定費のコストも考えた粗利益の前に,限界利益がプラスでないと,事業として話にならないということになります。そんなわけで,限界利益は『商売自体の収益性のポテンシャル』が分かる指標ということになります。

 

 『ポンテシャル』の意味するところですが,人件費や家賃や光熱費などの固定費に囚われず,「原材料を買ってきて(変動費)加工して売って(売上),それらの差額(売上ー変動費)で儲ける」という純粋な商売による利益が『限界利益(売上ー変動費)』の本質だからです。

 

 ここまでくれば,1節で書いたこちらの質問にも答えられるはずです。

>また,本質を理解しないことで,限界利益(=「利益+固定費」)が高いほど良いなら,

>「固定費」を増やしていけばいいのか?といった的外れな誤解を生んでしまったりします。

 

 限界利益は純粋な商売のプロセス(原材料を買ってきて(変動費)加工して売って(売上),それらの差額(売上ー変動費)で儲ける)で発生する利益です。そのため,そもそも固定費は関係ないのです。固定費を上げると同じだけ粗利益が下がるので,固定費を増やしても限界利益は変わりません。

 これは次の式変形からも分かると思います。

 

  • 限界利益=粗利益+固定費=売上ー(変動費+固定費)+固定費=売上ー変動費

⇒固定費と無関係

 

 また,限界利益を売上で割ったものが,「限界利益率」です。売上に対する,純粋な商売による利益の割合ですから,「限界利益率」は大きければ大きいほど良いということになります。

 

 ちなみに,限界利益=固定費の状態というのは,限界利益から固定費を支払ったら利益が無くなってしまった状態,つまり粗利益は0(ゼロ)ということで,ちょうど損益分岐点にいることになります。

 

4.何が『限界』なのか?

 『限界』という言葉のニュアンスから,「これ以上だせない限界(最大)の利益」という風に聞こえがちですが名前の由来は違います。大小関係で言えば,限界利益>粗利益になるというのはお話した通りで,辻褄は会いますが,実際には『限界』の意味するところは異なります。

 

 日本語の『限界利益』とは,英語の『Marginal profit』をそのまま和訳した言葉です。Marginalは形容詞ですが,名詞形はMarginで『端,余白、限界』を意味します。意味的には,『余白』が近く,「利ざや」とか「この商売はマージンが大きい」といったニュアンスです。

 

 ちなみに粗利益は英語は『Gross profit』で,(変動費だけでなく)固定費も差し引いたトータルの利益です。これと対比するとイメージし易いのではないでしょうか?

 

 いずれにして,英語を和訳した際に分かりにくくなってしまった,というのが本質なので,『限界』に関しては深く考えること自体に意味はあまり無いというのが結論です。

ポイント

 限界利益の『限界』はLimitの意味ではない。『Marginal profit』の和訳の過程で分かりにくくなっただけなので,深く考えることに意味はないです。

 

5.まとめ

  今回は会計用語で初心者がイメージしにくい,限界利益のイメージの仕方と本質的理解を目指して記事にしてみました。まとめると以下になります。

  • 限界利益=売上ー変動費=粗利益+固定費
  • 限界利益とは,たくさんある『利益』関連の用語の中で,最も大雑把な利益の出し方で,『商売自体の収益性のラフなポテンシャルが分かる指標』
  • 固定費を増やしても限界利益は変わらない
  • 「限界利益=固定費」の状態というのは,限界利益から固定費を支払ったら利益が無くなってしまった状態,つまり粗利益は0(ゼロ)ということで,ちょうど損益分岐点にいる
  • 限界利益を売上で割ったものが,「限界利益率」で,大きければ大きいほど良い

参考になれば幸いです。