江のブログ

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【受験・学校】算数・数学・物理などの理系科目を勉強する理由と意味は?

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 『勉強する意味は何か?』これは,大人子供問わず,疑問に思うことです。 特に,学校での勉強を経験し終えている大人は,学んだことが一向に実生活に生かされないことから,『一体何の役に立つだろう?』と思います。

 科目は沢山ありますが,特にやり玉に挙げられるのが,実生活と乖離していると思われている算数・数学などの科目です。国語や本を読んだりすることで,社会は旅行で歴史のある観光地に行けば,勉強して良かったなと思うこともあるかもしれません。一方,算数,数学はせいぜい恩恵をうけるのは,釣銭計算くらい。しかもキャッシュレス社会でそれすらなくなりつつあります。なので,「sin, cosなんで社会人になってから一回も使わない」「虚数でなんて現実にないものをなぜ勉強するのか?」と使い道が分からずじまいになりがちです。ただ,このように「多くの人が実生活で役に立たないと感じる」=「意味がない」,と考えるのは少し短絡的ではないでしょうか?

 そこで,今回は一応,東大理系卒,大企業の研究所に15年以上務めている経験も踏まえて,『算数・数学を勉強をする意味』について考えてみました。

 

1.算数・数学で論理的思考力が養われるは本当か?

 一見,実生活で使う機会のない算数,数学を勉強する意味について,「算数・数学は論理的な思考が養われるから必要だ」という意見をしばしば聞きます。たしかに数学も正しく学習すれば論理的な思考力が鍛えられるのは正しいと思います。

 しかし,これをもってして『学校で習う算数・数学を勉強する意味がある』と結論づけるのは違うのではないかと思ってます。理由は2つあります。

1-1. 算数・数学は暗記でも上手くやる人はいる 

 先ほど,算数・数学も”正しく学べば”論理的思考力がつくと言いました。しかし,実際のところ中学,高校で学ぶ数学教育自体は悪くはないですが,あまりにも受験テクニックが開発され過ぎていて,解法の暗記でもある程度のレベルなら到達します。 

 これは東大医学部出身の精神科医である和田秀樹さんも言及していることです。数学は暗記で,うまくやれば最難関の東大理三ですら合格できるといっています。

 実際に東大に合格した自分も,全面的に賛同はしませんが,人のスタイルで暗記で上手くいく人も多いとは思います。

 ですので,算数・数学を勉強すれば論理的な思考力が付かないとは思いませんが,それをもって『その勉強に意味がある』と主張するのは無理があると思っています。

 

1-2. どんなことでも意味がある論になっている

 「算数・数学を勉強すると論理的思考力がつく」という意見でもう1つ違うと思うのが,これが「どんなことでも意味がある論」になっているためです。

 「どんなことでも意味がある論」は,存在意義を疑われている古い慣習を正当化するときにしばしば使われる論法です。最悪の例でいうと,古い会社で新人にやらせる教育的価値のない雑用や,体育会系の根性論や玉拾いなどの無駄な作業を正当化するときの論法です。

giron.hateblo.jp

 『どんな雑用にだって学ぶことはある』それは真実だと思いますが,重要なのはその費用対効果ではないかと思うのです。会社の雑用で伸びる部分もあるとは思いますが,それよりその人の能力を開発するより良いベターな方法があるはずです。

 

 同様に, 『数学で論理的思考力を鍛える』も,それ以外に論理的思考力を鍛えるベストな方法はあるはずです。ディベートをしたり評論文を読んだり,議論やロジックをそのままズバリ育成する方法は他にいくらでもあります。

 「学校で算数・数学を勉強をする意味とは?」に答えるには,これら他の方法より『論理的思考力を鍛える上で算数・数学の勉強が優れていること』を証明しないといけないはずと思いますが,それができているのを見たことがありませんし,実際難しいと思います。なぜなら,算数・数学を勉強をする本当の意味は別のところにあると思うからです。

ポイント

算数・数学を勉強すれば「結果的に」思考力が付くが,これを数学教育の『目的』とするのは誤り

 

2.算数・数学を勉強する本当の理由とは?

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2-1. 最先端の技術開発では算数・数学で学ぶことは全て役に立つ

  実際の理由は,理系のエリートを選抜するためだと考えています。

  自分が研究職なので分かりますが,多少分野にもよりますが,最先端の科学技術を本質を理解しようとすると,かなり難解な数式を理解する必要があります。それこそ,中学高校レベルの数学ながら当たり前に分かっていないと使いこなすどころか理解すらできレベルの数学が使われていいます。

 冒頭で,「sin, cosなんて・・・」「虚数でなんて・・・」と書きましたが,これらは物理,化学などの基礎学問はもちろんのこと,半導体,電池,電気回路などの日本が強みとして応用技術において,当たり前に使われている基礎中の基礎です。そして,これらの原理原則が分かってないと,最先端の技術開発は生まれないです。これは自分が一応世間的には一流の研究所と呼ばれているところに長年いるからこそわかる部分でもあります。

 

2-2. 理系優秀者の選抜のため

 科学技術を発展し日本の国際競争力を保つことが重要だとすると,国の立場としてはこれらの基礎学問の習得者を1人でも多く増やすことが重要です(イノベーションには発想力やアイデアのほうが重要だ!という意見はここでは置いておくとして。。)。

 それではそのような国家の宝である理系エリートを養成するにはどうしたらいいでしょうか?

 それには,算数・数学を義務教育段階から必修科目として全員に学ばせ,その中で優秀な人材を選抜していくしかありません。その選抜の早すぎると,後から伸びる大器晩成型の優秀人材を見極められず,間違って切り捨ててしまう可能性があります。そうならないようにある程度長期間,中学・高校までは算数・数学を必修科目として学ばせる,これによってもれなく優秀人材をキープできるということだと思っています。

 その結果,このプロセスを経験した多くの人にとって,算数・数学で学んだことが役に立たないというのはある意味仕方がないことではないかと思います。

 ただし,「理系エリート選抜のため,多くの人にとって役に立たない算数・数学を学ぶ必要がある」とは公には言えません。だから,この考えは一般的でなく,一般の理解では「算数・数学は実生活で使えないのに存在していて不思議」止まりになっているのだと思います。

ポイント

算数・数学を勉強するのは,最終的には国際競争力を保つために必要な理系エリートの選抜のため・・・だが「選民」的な考えなので公にならない

2-3. 文系学問との違い

 こう考えてみると,結局「文系学問もエリート選抜のためで同じではないか」と思ってしまいますが、冒頭で書いたように,国語は本を読んだりすることで,社会は旅行で歴史観光地に行くことで,勉強して良かったと実感できることも多いです。つまり,エリート以外も広く一般教養として勉強の恩恵を受けることができます。

 一方,算数・数学は,釣銭計算くらいしか恩恵を受けない人が多いため(これすら,キャッシュレス社会でなくなりつつあります),不公平感があり,理系学問である算数・数学の勉強する意義が疑われがちなんだと思っています。また,最先端の技術開発の世界があまりにもマニアックなため,多くの人が技術開発の現場で実際に使われているのを知らないためと思います。

 今回の記事の結論をまとめると次になります。

  • 算数・数学を勉強をする意味を「論理的思考力を鍛えるため」と説明するのは,勉強のメリットの1つを挙げているだけで,費用対効果の視点が欠けている
  • 算数・数学を勉強をする/させる本当の意味は,理系エリートを選抜して,科学技術の観点で国際競争力を保つため
  • 算数・数学は,文系科目と比べても釣銭計算くらいしか恩恵を実感できないのと,実際に技術開発であらゆるところで使われているのが一般に知られていないので,その存在意義を疑われがち
  • 特に,2つ目の理由は一般的には口に出せないので,一般の理解は「算数・数学は実生活で使えないのに存在していて不思議」止まりになっている

3.まとめ

 今回は,東大理系卒,大企業の研究所に15年以上務めている経験も生かして,『算数・数学を勉強をする意味』について考えてみました。備忘録的に書いてみましたが,共感してくれる方がいれば幸いです。